東京都不健全図書指定に対して送った反対意見メールの実例 その3

更新が遅れて4か月近く間が空いてしまいましたが、3件目のメールを紹介します。

 

 ●3件目のメール●

今回紹介するメールは2020年2月26日に送っています。

2019年10月に指定された「いくいく!淫魔ちゃん」と、2020年1月に指定された「やましい恋のはじめかた」「やましい恋のはじめかた初回限定版」2冊同時指定に対する反対意見です。

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いくいく!淫魔ちゃん(織島ユポポ)

 

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やましい恋のはじめかた・やましい恋のはじめかた初回限定版(小東さと)

実は2019年には私は体調がすぐれず、まる1年間、東京都にメールを送る元気がありませんでした。

2020年最初の指定となった「やましい恋のはじめかた」「やましい恋のはじめかた初回限定版」という同じ本の2冊同時指定という例を、私は今までに聞いたことがなく、意見を言わずにはいられなくなり、2018年以来ひさびさの反対意見メールとなりました。2019年10月の「いくいく!淫魔ちゃん」指定にも私は納得がいかなかったので、それらの意見を一緒に書いて送りました。

 

 

---メールここから

 

件名:青少年健全育成審議会ご担当者様(不健全図書の指定について反対意見)

2020/2/26, Wed 14:27

 

都民安全推進本部 若年支援課 御中

青少年健全育成審議会 ご担当者様

 

 

お世話になっております。

先に発表されました不健全図書の指定について、反対意見を申し上げたく

メールいたします。

 

・令和1年10月指定

(第712回東京都青少年健全育成審議会答申)

「いくいく!淫魔ちゃん」

 

・令和2年1月指定

(第715回東京都青少年健全育成審議会答申)

「やましい恋のはじめかた」「やましい恋のはじめかた初回限定版」

 

 

まず、令和1年10月指定(第712回東京都青少年健全育成審議会答申)

「いくいく!淫魔ちゃん」について申し上げます。

答申発表後、この本を購入し、内容を確認いたしましたところ、

第一に、昨今の指定図書とは違って、性器の修正がなされていることが印象に残りました。

そのため、なぜこの作品集が指定されたのか、違和感を覚えます。

 

出版社・作者が性器描写に修正を加えたのは、ひとえに

今までの東京都からの意見に従ったからだと思われます。

性器が見える、性器の形が分かる、といったものは東京都の基準に当たるとの意見に従い、

出版社が不健全図書に指定されないことを目指して修正を実行したにもかかわらず、

不健全図書に指定するのは、約束が違うのではないですか。

この指定は到底、看過できません。

「いくいく!淫魔ちゃん」の不健全図書指定には強く抗議します。

 

そもそも不健全図書の指定は、事前の出版社への事情聴取もなく、一方的に指定し、

また出版社に弁明の機会も与えることなく、東京都は書店への通知を強行するといった側面があります。

けっして権力を濫用することなく、不健全図書の指定基準に従って、厳密に行われなければなりません。

この指定は、これまでの対話で積み重ねてきたはずの出版社との関係を

東京都がみずから反故にするような裏切り行為ではないかと言わざるを得ません。

この指定により、出版社に「東京都の指導に従ったにもかかわらず、不健全図書に指定されてしまうのだから、

何を信じればよいか分からない」と動揺させることになりかねません。

出版業界を萎縮させ、今後の民間の創作活動に大きく影響を及ぼすおそれが十分考えられます。

 

以上のことから「いくいく!淫魔ちゃん」については妥当な指定だったとは思えません。

したがいまして、反対の意を表します。

 

 

次に、令和2年1月指定(第715回東京都青少年健全育成審議会答申)

「やましい恋のはじめかた」「やましい恋のはじめかた初回限定版」

2誌同時指定について申し上げます。

商品の販売促進のために付録をつけた初回限定版を用意することは出版社の営業努力として

ひとつの手法であり、これに打撃を与えるような2誌同時指定を行うことは

経済の自由の侵害につながるのではないでしょうか。

初回限定版の本体の中身は通常版と同一なのであれば、指定の数は1誌となるよう

答申内容を工夫するべきだったのではないかと考えます。

 

今後、同じような諮問図書が出た場合には、今回の悪しき前例を踏襲するのではなく、

やり方を工夫し、改善してほしいと考えます。

 

 

以上、2件3誌の不健全図書指定について反対意見を申し上げました。

受理のほどよろしくお願いいたします。

 

 

(住所)

(氏名)

(電話)

 

---メールここまで

 

「やましい恋のはじめかた」「やましい恋のはじめかた初回限定版」2冊同時指定は審議会でも問題視され、指定された翌月の2020年2月、第716回東京都青少年健全育成審議会で委員から意見が出ました。

 https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/jakunenshien/singi/kenzensin/706-menu/716gijiroku.pdf

(PDF)

 

議事録を見るとC委員から発議があり、I委員からも2回という指定回数について場合によってはあらためて審議会にはかるべき、出版社にも聴取する必要ありと発言があります。

その部分を抜粋して、最後に掲載します。

 

私が反対意見のメールを送ったのは2月の審議会の後なので、私のメールが審議会に報告されているとすれば7月の第717回東京都青少年健全育成審議会のことです。

この記事を書いている10月10日の時点で第717回審議会の議事録はまだ公開されていません。

 

 

 

【令和2年(2020年)2月10日開催 第716回東京都青少年健全育成審議会議事録より抜粋】

○C委員 すみません。先月の審議をした指定図書のお話でなんですけれども、「やましい恋のはじめかた」という本を審議して、指定になったと思うんですが、そのときに、通常版とその初回限定版というものを同時に審議をしまして、基本的には、初回限定版というのは、普通のものに付録がついたものという体裁だったんですけれども、一つのその本の内容で、一遍に2回の指定になったということで、私もその審議を終わった後に、いろいろ声をいただ いて、確かに1年で6回の指定というところから考えると、出版社にとっても、なかなか大きなことだなというふうに思いまして。

多分、いろんなケースが考えられるとは思うんですけれど、付録がつくのか、あるいは半分だけ一緒になっていたりというケースもあるのかもしれないんですけれども、おおむね、今回のような、前回の指定をもう覆そうという気持ちは全くないんですけれども、例えばAというものに対して付録がついていてBとなっていたものに関して、Aが、その大部分がも う指定だよとなった場合には、当然Bも指定になるわけであって、これは、もしかすると、1冊分の指定でもいいんじゃないかというふうに、私も思うんですけれども。

その付録の部分だけが問題だというときには、当然、Bだけ指定すればいいと、Bが指定されるとわかるんですけれども、そういったところについての考え方というものを事務局のほうで、ちょっとどういうお考えをお持ちなのかということと、皆さんのご意見というものがあれば、お聞きをしたいなというふうに思います。

○会長 前回の話というのは、今日配られた審議会次第の中の3ページ、ご記憶にあるとは思いますけれど、3ページのところに、前回、1月 17 日に告示した分、3冊になっています。その最後の18、19番、2冊のことでご記憶にあると思います。同じ初回限定版と通常版で、片一方には付録冊子がついています。そういうものについて、今回、2誌なので2回指定になっていることが、どういう考え方なのかということを、事務局に聞いておきたいということですね。

○C委員 ああいうふうな、今回初めてだということなんですけれども、ことが起こると、やっぱり出版社側も、その初回限定版のような工夫をすることを萎縮してしまうのではないかという声もあるので、ちょっとそこら辺については整理をいただいていたほうがいいかなというふうに思いまして、お伺いをしています。

○会長 事務局、何かいかがでしょうか。

○若年支援課長 同一の機会に同一の図書類業者が発行をする2点の図書類が指定を受けた場合ですけれども、このときは、累回のほうも2回指定を受けたものとして、計上するということにしてございますが、お話のように、通常版と初回限定版の同時の指定というのは、今回初めてでございまして、事務局として検討いたしましたけれども、別の図書として出版をされていて、それぞれについて指定をするという以上、累回の計上回数は指定図書の件数と同じとすべきと、つまり今回の場合では2回とすべきという結論になったところでございます。

○C委員 団体との打合せ会の中でも、ちょっとそこについては意見が出たやに伺っているんですけれど、ほかの委員の先生方の何かご意見があれば、お聞きをしたいと思います。

すみません。

○会長 ええ、ほかの委員の方のご意見も、もしあれば聞いてみたいということで。では、I委員。

○I委員 私も相談を受けたり、いろいろしています。ほとんど内容が一緒で、付録だけがついているんですけども、本というのは出版コードがありまして、これはコードが別物なんですよね。それで、この出版社としては、要するに同じ本を別のコードで出しているんですよ。

それで、やっぱり同じ内容だから、これは1冊でいいんじゃないかという考え方と、なぜ付録をつけてまた新しく出したのかということについて、やはり付録の部分は別の、要するに本誌は一緒だけれども、付録は違っているところがあるんで、やはり2冊という考え方は、事務局、今おっしゃったような意味ではわかるんですね。

ただ、C委員がおっしゃったようなところで言いますと、やはり発売した出版社が萎縮するんじゃないかとか、あるいは、ある種の行政の圧力になるんじゃないかというような考え方もできなくもないと思うんです。ですから、表現の自由とか、あるいは出版の自由とかから考えますと、私としても、指定が全部で6回となり、警告する段階で、もう一度、この2回分を含めて6回と考えるべきかどうか、審議会にはかるべきでしょう。その上で、この出版社にも、何か異論があるかと、聞く必要はあると思います。

ですから、その意味では、何とも業界の中では、ちょっと厳しいところもあるんですけども、東京都の決定としても、やはり別の本として考える考え方をとらざるを得なかったんじゃないかというふうに感じております。それは、今後この業界の中で、どういう反応があるかに関しても、説明したいと思いますので、今回、引き取らせていただいて、ちょっと話してみようかと思っております。

以上です。

○会長 ありがとうございます。

ほかの委員の方、どうでしょうか。

私も、実は、事務局からの事前のご相談はあったんですけれど、やはり、表紙も、たしか絵柄も違い。

○I委員 違いますね。

○会長 コードも違い、1刷、2刷、3刷を重ねていったものとは、やはり違うものとして、出版社の方もされているというふうに考えられるのではないかと、私自身は思いました。ここは、一応事務局のご判断で、私はいいんじゃないかと思う旨をお伝えしたところです。

ほかの方、いいでしょうか。

よろしいですか。

○C委員 今、ご意見をいただけてよかったです。ありがとうございます。